石田修二研究室 > 公務員研究d(法学) >

2012年度 後学期試験

2013年1月29日

問題 1

以下の文章の正誤を判断せよ。(各1点 計34点)

1. 特別法は一般法に優先する

答えは()。中間テストでも中間の再試験でも出題した。間違えたものは猛省すること。

2. 1つの事件に公法と私法が併行して適用されることはない。

答えは(×)。例えば交通事故のように、併行して適用される事件もある。

3. 憲法改正の案をいずれかの議院に提案することを「発議」といい、国会が国民に対して憲法の改正を提案することを「発案」という。

答えは(×)。249ページより出題。「発議」と「発案」の意味が逆。

4. 新聞の記事によって名誉を傷つけられた者には、憲法上、その新聞紙上において反論する権利が保障されている。

答えは(×)。教科書47ページより出題。サンケイ新聞事件 [wikipedia.org] 判決。

5. 傍聴人の法廷における筆記行為は、表現の自由そのものではないが、その精神に照らし尊重に値する。

答えは()。教科書47ページより出題。レペタ事件判決。

6. 報道機関が公務員に対し、国家秘密を漏示させるために説得することは、秘密漏示の教唆に当たるものであり、許されるものではない。

答えは(×)。教科書47ページより出題。西山記者事件。判例は、許される場合もあるとしている。

7. 現在、一般職国家公務員については、選挙権の行使以外のほとんどあらゆる政治活動が禁止されているが、このことは「行政の中立的運営」の要請に留意すれば、やむをえないことである。

答えは()。

8. 選挙運動の例として、事前運動の禁止、文書活動の制限、戸別訪問の禁止を挙げることができるが、最高裁はこのいずれについても合憲としている。

答えは()。

9. 公務員でもなく、また、公職選挙の候補者でもない者については、その私的行状が「公共の利害に関する事実」たりうることはありえない。

答えは(×)。

10. 公権力によって表現行為に対して事前規制を行うことは検閲に当たるので、裁判所による映画や出版物の事前規制もすべて禁止される。

答えは(×)。

11. 裁判所が私人の請求により雑誌の発売前にその内容を審査し、プライバシー侵害のおそれありとして発表を差し止めることは、検閲に当たる。

答えは(×)。

12. 出版物の表現内容について事後的に刑罰を科すことによってその公表に影響を与えることは、検閲に当たる。

答えは(×)。

13. 信教の自由には、信仰する自由、儀式を行う自由は含まれるが、布教の自由は含まれない。これは、もっぱら表現の自由に含まれると解されている。

答えは(×)。

14. 精神障害の少女の治療のため、僧侶が加持祈祷を行い、その結果、心臓まひを引き起こして少女を死に至らしめた。この場合、僧侶の行為はあくまで信仰上の行為であるから、これを罰することはできない。

答えは(×)。

15. 妻の意向に反して、他者が夫の霊を神社に合祀することは、妻の宗教的人格権を侵害し、違法である。

答えは(×)。

16. 日本国憲法は、明治憲法下の経験にかんがみて、政教分離の徹底を図っている。限定分離という考え方は、このような趣旨に反し、誤りである。

答えは(×)。

17. 総理大臣が靖国神社に公式参拝し、公費で玉串料を支払い、宗教的儀式を行えば違憲といわざるをえず、一般国民もこれについて、裁判所に訴訟を提起して、その違憲確認を請求しうる。

答えは(×)。

18. 知事が靖国神社に玉串料を公金で支払ったとしても、特定の宗教に対する援助、助長、促進になるわけではない。

答えは(×)。

19. 信教の自由は、日本国民に対してのみ保障されているものであって、外国人はその保障の享有主体とはなりえない。

答えは(×)。

20. 警察官は,現行犯でもなく,また逮捕状を持たないという場合には,逮捕できない。

答えは(×)。

21. 違法な方法で収集された押収物は,これを証拠として用いることができない。

答えは(×)。

22. あまりにはなはだしく訴訟が遅延した場合,憲法37条を直接適用して,審理を打ち切ることができる。

答えは()。

23. 憲法において、不利益供述を拒否しうる権利が保障されているので、証人として法廷で発言する際に、自分の社会的名誉を傷つけるおそれのある事柄については証言を拒否しうる。

答えは(×)。

24. 証拠が本人の自白のみのときには、それが法廷における自白であったとしても、有罪にはなしえない。

答えは(×)。

25. 一審無罪のときに,検察官が上訴するのは,一事不再理の原則に反し,違憲である。

答えは(×)。

26. 死刑は残虐な刑罰であるから,憲法上禁止されている。

答えは(×)。

27. 密輸に用いられた船舶は、その所有者になんら告知せず、没収することができる。

答えは(×)。

28. 判例においては、環境権が生存権の内容であるとはされていない。

答えは()。教科書115ページより出題。

29. 判例は、明らかに「国家の教育権説」に立っている。

答えは(×)。教科書115ページより出題。

30. 義務教育は無償でなければならないので、授業料のみならず、教科書の費用もとることはできない。

答えは(×)。教科書115ページより出題。憲法上は、授業料の無償で足りるとされている。

31. 政治ストは、暴力を伴わないものであっても、正当な争議行為ではない。

答えは()。教科書115ページより出題。

32. たとえ争議行為としてなされたことであっても、住居侵入罪や威力業務妨害罪の構成要件に該当するような行為をしてはならない。そのような行為がなされれば、一般の場合と同様に処断されるべきである。

答えは(×)。教科書115ページより出題。

33. 使用者が組合活動を理由として労働者を差別することは、憲法28条に直接違反する行為である。

答えは()。教科書115ページより出題。団結権侵害にあたる。

34. たとえ正当な争議行為であっても、ストライキにおいて労務提供業務の不履行という契約違反を引き起こしたときには、労働者は企業に対してそれによって生じた損害を賠償しなければならない。

答えは(×)。教科書115ページより出題。正当な争議行為の場合には免責される(民事免責

問題 2(3点)

憲法改正に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 国会における憲法改正の発議についても、法律案と同様に衆議院の優越が認められている。
  2. 憲法改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成を経た後、国民投票において、その3分の2以上の賛成を経たときに行われる。
  3. 憲法改正について国民の承認を経たときには、天皇は、国民の名で直ちにこれを公布しなければならない。
  4. 憲法改正の国民投票は、衆議院または参議院の選挙のさいにのみ行うことができる。

問題 3(3点)

次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. (国政・地方含めて)選挙権は国民固有の権利であるから、外国人にこれを保障することは憲法上禁止されている。
  2. 法人に懲役刑を科すことはできないが、罰金刑を科すことは可能である。
  3. 天皇にも結婚の自由は保障されている。
  4. 法人は人間(自然人)ではないから、権利能力を持たない。
  5. 外国人は、社会保障について、日本国民と同様の権利を享受しうる。

答えは 2

問題 4(3点)

私人相互間における基本的人権の保障に関するつぎの記述のうち、判例に照らし妥当なものはどれか。

  1. 基本的人権の保障は、すべての社会生活に共通する基本原理であるから、憲法の人権保障規定は、国または公共団体と個人との関係を規律するのみならず、私人間の関係について当然に適用される。
  2. 自由権的基本権の保障規定は、本来、国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障することを目的とした規定であって、私人相互間の関係について当然に適用されるものではない。
  3. 基本的人権の保障は、私人間における法律関係に当然に及ぶものではないが、当事者の一方が情報の収集、管理、処理について強い影響力をもつ日刊新聞社である場合には、憲法の規定が直接適用される。
  4. もっぱら女子であることのみを理由として女子の定年年齢を男子より低く定める就業規則は、性別のみによる不合理な差別を行うものであり、基本的人権の保障は、私人間にも当然及ぶものであることから、法の下の平等を定めた憲法14条1項の規定に反し、無効である。
  5. 思想、信条の自由に関する憲法上の保障は、私人相互間にも当然に及び、これを制限するのは合理的理由のある場合に限られるから、企業者が特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを拒むことができるのは、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当と是認される場合に限られる。

答えは 2

問題 5(3点)

次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 日本国憲法は、絶対的平等主義をとっている。
  2. 憲法14条に列挙されていない事項についても、差別することは原則的に許されない。
  3. 嫡出子と非嫡出子の間に、相続分について差別をもうけることは、違憲である。
  4. 女子のみに再婚禁止期間をもうけることは、違憲の男女差別である

答えは 2

問題 6(3点)

表現の自由に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 私人の私生活上の行状は、私人の携わる社会的活動の性質およびこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度に差があっても、刑法230条の2第1項に規定する「公共の利害に関する事実」には当たらない。
  2. 事実の報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条によって保障されており、報道のための取材の自由も同上の精神に照らし、十分尊重に値するものであるから、これに制約をもうけることはおよそ許されない。
  3. 憲法21条は、公共の福祉のために最も重大な司法権の公正な発動について欠くことのできない証言の義務を犠牲にしてまで、新聞記者の取材源について証言拒否の権利を保障しているものではない。

(参考)刑法
第230条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
第230条の2 前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

答えは 3

問題 7(3点)

次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 国外ですでに発表済みの出版物等を、税関検査でわいせつ性を理由に輸入を禁止にすることは、事前に発表そのものをいっさい禁止するというものではないから、憲法に禁止される検閲には当たらない。
  2. 報道の内容が公職選挙の候補者に対する評価・批判等に関するものであれば、たとえその表現内容がその候補者の名誉を毀損する場合であっても、印刷その他出版活動の事前差止めはいっさい認められない。
  3. わいせつな表現のある作品が社会の秩序になんらかの好ましくない影響を及ぼすものであっても、その作品を出版し鑑賞させることにより大きな社会的価値がある限りこれを制限することは許されない。

答えは 1

問題 8(3点)

信教の自由に関する記述として正しいものは次のうちどれか。

  1. 明治憲法は、信教の自由についてなんら規定していなかったが、実際には広く認められていた。
  2. 私立学校に対して宗教教育を行うことを禁止することは、憲法に違反する。
  3. 法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした宗教法人であっても、その解散を命じることが憲法に反することであることは、まったく議論の余地がない。
  4. 市が地鎮祭を行うのは、憲法の禁止する宗教的活動に当たる。

答えは 2

問題 9(3点)

つぎのうち、政教分離に反するものはどれか。

  1. 官庁が、正月に門松を立てること。
  2. 宗教団体のすべてに平等に国が補助金を与えること。
  3. 刑務所内で牧師が、希望者に対してキリスト教に関する講話をすること。
  4. 私立学校で生徒に、特定の宗教にもとづく礼拝を強制すること。
  5. 他の公益または非営利法人と同様に、宗教団体に対して租税を免除すること。

答えは 2

問題 10(3点)

信教の自由に関するつぎの記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 政府が特定の宗教・宗派を援助する行為をした場合に、その宗教・宗派に属さない者は自己の信教の自由が侵害されていることになるから、その行為の差止めなどを裁判所に求めることができるとするのが判例である。
  2. 宗教家が病気を治癒させるための加持祈祷として病者を殴打して負傷させても、宗教上の行為として行った以上、傷害の罪にとうことはできない。
  3. 日曜日を安息日とする宗派の信徒であって公立学校の生徒である者が、日曜日に行われた授業参観に出席しなかった場合、学校長がこれを欠席扱いとすることは、信教の自由を制限するものであって許されない。
  4. 宗教法人が解散されると、礼拝用の財産の散逸などによって信徒の信教の自由に悪影響を及ぼすことがあるが、当該宗教法人が著しく公共の福祉に反する行為をした場合には、行政庁がその解散を命じても憲法に違反しない。

答えは 4

問題 11(3点)

刑事被告人および被疑者の基本的人権に関する記述として正しいものは、次のうちどれか。

  1. 現行犯を除き、たとえその犯罪が重大で緊急を要するものであっても、被疑者の逮捕には、その前に一定の要件を備えた令状を必要とする。
  2. 書類および所持品の押収は、たとえ現行犯であったとしても、一定の要件を備えた令状を必要とする。
  3. 自己が刑事責任を負うおそれがあるときには、たとえ行政手続や国会での証言であったとしても、人は自己に不利益な供述を強要されない。
  4. 他の補強する証拠がない場合には、たとえ共犯者である共同被告人の自白があったとしても、それを唯一の証拠として被告人に刑罰を科することはできない。
  5. 被告人はいかなる場合でも資格を有する弁護人を依頼することができるのであるから、国は刑事被告人の請求ができないときでも、裁判に当たっては常に弁護人を同席させなければならない。

答えは 3

問題 12(3点)

朝日訴訟判決(最大判昭42.5.24)に照らし妥当なものは、次のうちどれか。

  1. 憲法25条1項の規定は、すべての国民が健康的で文化的な最低限度の生活を営みうるよう国政を運営すべきことを国の責務としており、直接個々の国民に対して具体的な権利を付与したものである。
  2. 憲法25条1項は、プログラム規定であり、憲法の趣旨を実現するために制定された生活保護法によっても具体的権利は与えられない。
  3. 生活保護法の規定に基づき要保護者が国から生活保護を受けるのは、たんなる国の恩恵ないし社会政策に伴う反射的利益であって、法的権利でない。
  4. 生活保護法の規定にもとづき要保護者が国から生活保護を受ける権利は、一身専属的権利であって相続の対象にならない。

答えは 4

問題 13(3点)

憲法28条は「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と規定しているが、ここでいう「勤労者」に関する記述として正しいものは、次のうちどれか。

  1. 主として家事に従事している主婦であっても、短時間のパートタイマーに雇用されれば、勤労者に該当する。
  2. 自家営業を営む農民、漁民であっても、労働によって収入を得ている以上、勤労者に該当する。
  3. 労働力を売って対価を得ている者であっても、現に職を有していない者は、勤労者に該当しない。
  4. 企業に勤務する課長などの中間管理者は、勤労者を管理する立場にあるので、勤労者に該当しない。
  5. 国または地方公共団体に勤務する公務員は、全体の奉仕者としての性格上、勤労者に該当しない。

答えは 1。教科書118ページよりそのまま出題。

  1. 正しい。パートタイムであっても、「勤労者」に該当する。
  2. 誤り。自己の計算で業を営む者、たとえば漁民、農民、小商工業者は、憲法28条にいう「勤労者」でないと解されている。
  3. 誤り。
  4. 誤り。
  5. 誤り。

リンクはご自由にどうぞ。

【石田修二フロントページ】 【公務員研究d】