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平等権

2013年11月19日

教科書34ページ,プリント23ページ

法の下の平等

日本国憲法第14条1項

すべての国民は,法の下の平等であつて,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない。

例示に過ぎない

理解度チェック

憲法14条1項に列挙された「人種・信条・性別・社会的身分又は門地」は例示的なものであって,法の下の平等は必ずしもこれらの事由にのみに限られるものではないとするのが判例である。(地方上級)

(答え)正しい(◯)。学説はほぼ一致している。後ろの問題でも出題している。

憲法14条が禁止されるべき差別事由として列挙している人種,信条,差別等は,同条に列挙された事由による差別のみを禁止する限定的列挙と解されるから,列挙事由以外の事由による差別は同条に違反しない。(市役所)

(答え)誤り(×)。憲法14条に列挙された人種,信条,性別,社会的身分,門地などは,歴史的に人を差別する理由とされてきたものを例示したにすぎない(最判昭39.5.27)。それゆえ,同条に列挙された以外の事由による差別であっても,差別を正当化するだけの合理的な事由がないかぎり,同条に違反する。問題4で再出題。

内容の平等

相対的平等

合理性の基準

最高裁の判例・平等観

強姦罪の男女差別

男女の生理的な相違(例えば妊娠の可能性)などを根拠に,合憲と判示しています(最大判昭28.6.24)

尊属殺人に対する重罰

公務員に対する政治活動の制限

現在,公務員には,政治活動の制限が大幅にされている。猿払事件で国家公務員に対する政治活動の制限が問題にされた。最高裁は「行政の政治的中立」を根拠に,国家公務員の政治活動制限を合憲とした(最大判昭49.11.6)

再婚についての男女差別

堀木事件

母である障害者(全盲)が,障害福祉年金のほかに児童扶養手当の支給を申請したところ,法律に併給禁止の規定があることを理由に却下された。

最高裁は,このような差別は不合理な差別といえず,合憲であるとした。

詳しくは,憲法をわかりやすく 第12章 社会権 一,生存権参照。

障害福祉年金と児童扶養手当との併給調整(禁止)規定は,障害福祉年金を受け取ることができる者とそうでない者との間に児童扶養手当の受給に関して差別を生ずるので,憲法14条1項に違反する。(国家II種)

誤り(×)。併給禁止規定により差別が生じても広範な立法裁量を前提として判断すると,差別は不合理なものとはいえず,憲法14条に違反しないとするのが判例である(最判昭57.7.7)

議員定数の不均衡

日産自動車事件

三菱樹脂事件

理解度チェック

次の文章の正誤を判断しなさい。

憲法は,人種,性別,社会的身分,門地による差別を禁止している。しかし,これ以外のことがらについての差別は,合理的差別として許される。

誤り(×)。憲法14条1項の列挙は例示に過ぎない。

公権力が国民を差別することは,例外なく禁止される。

誤り(×)。許される場合もある。

強姦罪の規定は男性のみを罰するものとしているので,法の下の平等に反する。

誤り(×)。

尊属殺規定(刑法旧200条)は,尊属と卑属の関係において,差別的扱いをしているので違憲である。

誤り(×)。理由づけが誤っている。

法の下の平等は公権力を拘束するためのものであるので,私人の行為にこれが適用されることはありえない。

誤り(×)。間接的に憲法14条が適用されることはありうる。

憲法14条は法の下の平等を定めているが,合理的な区別は認められており,不合理な差別的取扱いだけが禁止される。(東京消防庁,平成19年度)

正しい(◯)。教科書30ページの必修問題の選択肢1より抜粋。形式的平等から生み出された不平等を是正するための合理的区別は認められている(最判昭60.3.27)。

プリントには作成時間の関係で入れられなかったが,次の文章の正誤も答えられるようにしておきたい。

憲法28条にいう勤労者には公務員も含まれるので,法律によって公務員の争議行為を全面的に禁止することは憲法に違反すると最高裁判所は判示している。

誤り(×)。教科書39ページのNo.8選択肢5より抜粋。判例上,憲法28条の「勤労者」に公務員も含めている(最判昭41.10.26・全逓東京中郵事件)。しかし,公務員の争議行為を全面的に禁止することについては,「勤労者をも含めた国民全体の共同利益からするやむをえない制約」として,憲法に違反しないと判示している(最判昭48.4.25・全農林警職法事件

警察職員や消防職員の争議行為を禁止することは認められていない。(消防官/市役所A,平成13年度)

誤り(×)。教科書40ページのNo.12選択肢3より抜粋。国家公務員法108条の2第5項,地方公務員法52条5項により,警察職員や消防職員は,争議行為を含む労働三権(団結権,団体交渉権,団体行動権)のすべてが認められていない。

問題1
法の下の平等を定めた憲法14条に関する次の記述のうち,妥当なものはどれか。(地方上級)

  1. 憲法14条1項に列挙された「人種・信条・性別・社会的身分又は門地」は例示的なものであって,法の下の平等は必ずしもこれらの事由にのみに限られるものではないとするのが判例である。
  2. 憲法14条1項の「人種・信条・性別・社会的身分又は門地」については絶対的な平等が要求され,いかなる理由にもとづく場合であっても差別的な取扱いは許されないとするのが通説である。
  3. 憲法は貴族制度を否定しているわけではないので,貴族制度を復活させたとしても,なんらかの特典が伴わないかぎり憲法に違反するものではないとするのが通説である。
  4. 憲法14条1項は,他の人権規定とは異なり,国または公共団体と個人の関係のみならず私人相互間も直接規定するものであるとするのが判例である。
  5. 憲法上,尊属に対する傷害致死を通常の傷害致死よりも重く処罰する規定をもうけることは,被害者と加害者の間に存する特別な身分関係にもとづき法定刑のうえで差別的取扱いをすることになるので,憲法14条1講に違反するというのが判例である。

正解は1

両性の本質的平等

日本国憲法第24条

問題2
日本国憲法の平等権に関する記述として正しくないものはどれか。

  1. 華族その他の制度は認められない。
  2. 栄誉,勲章その他の栄典の授与によって特権が与えられる
  3. 婚姻は両性の合意にのみ基いて成立する
  4. 選挙権は一定の年齢以上の国民に平等に与えられる
  5. 尊属殺人の刑罰が,刑法では一般の殺人の刑罰より重いのは憲法14条に照らして違憲であると判決された

答えは2

  1. 正しい。憲法14条1項
  2. 誤り。いかなる特権も与えられない。憲法14条3項
  3. 正しい。憲法24条1項
  4. 正しい。憲法15条3項
  5. 正しい。

問題3
憲法14条に関するつぎの記述のうち,判例に照らし,妥当なものはどれか。(国家II種)

  1. 障害福祉年金と児童扶養手当との併給調整(禁止)規定は,障害福祉年金を受け取ることができる者とそうでない者との間に児童扶養手当の受給に関して差別を生ずるので,憲法14条1項に違反する。
  2. 民間の企業者が,特定の思想,信条を有する者を,そのことを理由として雇入れを拒否することは,違法である。
  3. 合理的理由が認められないにもかかわらず,会社の就業規則で,定年年齢を男性60歳,女性55歳に定めることは,不合理な差別となる。
  4. 尊属殺重罰規定は,尊属に対する尊重報恩の確保という立法目的自体が封建的身分制度にもとづくものであり,違憲である。
  5. 選挙人資格における差別は禁止されているが,選挙権の内容である各選挙人の投票の価値の平等は,憲法の要求するところではない。

(参考)憲法
14条1 すべての国民は,法の下の平等であつて,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない。

正解は3

問題4
法の下の平等に関するつぎの記述のうち,妥当なものはどれか。(市役所)

  1. 憲法14条に定める法の下の平等とは,法律の適用の平等を意味するものであり,法律の内容の平等まで要求するものではないのであるから,同条の規定は国会の立法作用を拘束するものではない。
  2. 憲法14条が禁止されるべき差別事由として列挙している人種,信条,差別等は,同条に列挙された事由による差別のみを禁止する限定的列挙と解されるから,列挙事由以外の事由による差別は同条に違反しない。
  3. 禁錮以上の系に処せされた者の失職を定めた地方公務員法の規定は,法律上このような制度がもうけられていない私企業労働者に比べて地方公務員を不当に差別するものであり,憲法14条に違反するとするのが判例である。
  4. 企業が労働者の思想,信条を理由としてその者の雇い入れを拒否することは,憲法14条に違反し,許されないとするのが判例である。
  5. ある事項について地方公共団体が個別に条例を制定する結果,その取扱いに関し地域的に差別を生ずることがあっても,憲法14条に違反するとはいえないとするのが判例である。

正解は5


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Last modified: 2013-11-12 21:57:04