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2014年度 後学期試験

2015年1月27日

問題 1

以下の文章の正誤を判断せよ。(各1点 計29点)

1. 法は,公法と私法に分類されることがあるが,公法には憲法,刑法,刑事訴訟法などが含まれ,私法には民法,商法,民事訴訟法などが含まれる。

答えは(×)。中間テストでも中間の再試験でも出題した。間違えたものは猛省すること。

○を選択した割合(正解率):88%、×を選択した割合(誤答率):12%

2. 法の効力の及ぶ範囲で法を区分すると,一般法と特別法に分類されるが,一般法は広く一般的に適用される法であるから,一般法が特別法に優先して適用される。

答えは(×)。

3. 商法は、商取引に関し、商法に規定のないものについては、商慣習法を適用し、商慣習法がないときは、民法を適用すると定めている。

答えは()。249ページより出題。「発議」と「発案」の意味が逆。

4. 最高裁判所は,一切の法律,命令,規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する終審裁判所である。

答えは(×)。教科書47ページより出題。サンケイ新聞事件 [wikipedia.org] 判決。

5. 傍聴人の法廷における筆記行為は、表現の自由そのものではないが、その精神に照らし尊重に値する。

答えは()。教科書47ページより出題。レペタ事件判決。

6. 報道機関が公務員に対し、国家秘密を漏示させるために説得することは、秘密漏示の教唆に当たるものであり、許されるものではない。

答えは(×)。教科書47ページより出題。西山記者事件。判例は、許される場合もあるとしている。

7. 世界で初めて社会権を明記したのは,1889年に制定された大日本帝国憲法であり,これをきっかけに世界中に社会権の考え方が広まった。

答えは(×)。

8. 国会の召集は天皇の国事行為であるが,召集の決定は内閣が行う。

答えは()。国会の召集は天皇の国事行為である(第7条第1号)しかし,国会(臨時会)の召集は内閣が決定する(同法第53条)

9. 日本国憲法は主権在民,平和主義,人権尊重の三原則を明らかにしており,特に平和主義に関しては明確に戦争放棄を掲げているが,侵略戦争を禁じた条項は国際的に見ても他国の憲法や条約に例のない,わが国独自の規定である

答えは(×)。

10. 公権力によって表現行為に対して事前規制を行うことは検閲に当たるので、裁判所による映画や出版物の事前規制もすべて禁止される。

答えは(×)。

11. 裁判所が私人の請求により雑誌の発売前にその内容を審査し、プライバシー侵害のおそれありとして発表を差し止めることは、検閲に当たる。

答えは(×)。

12. 出版物の表現内容について事後的に刑罰を科すことによってその公表に影響を与えることは、検閲に当たる。

答えは(×)。

13. 信教の自由には、信仰する自由、儀式を行う自由は含まれるが、布教の自由は含まれない。これは、もっぱら表現の自由に含まれると解されている。

答えは(×)。

14. 憲法改正について国民の承認があった場合,天皇は内閣の助言と承認を待たずに直ちに憲法改正を公布しなければならない

答えは(×)。

15. 憲法の基本原理以外の条項を改正する場合は,憲法改正の国民投票を行わず簡便な手続きでよい。

答えは(×)。

16. 天皇や皇族も,権利の性質に抵触しない限りにおいて,人権享有主体とみなされる。

答えは()。

17. 象徴としての天皇は,その地位が特殊であり,原則として憲法第3章で国民の権利および義務の適用を受けないとされている。

答えは(×)。

18. 人権概念は自然人固有のもので,法人は自然人を通じて行動するのだから,法人自体はいかなる基本的人権をもつことはない。

答えは(×)。

19. 外国人は,在留目的として認められた活動に専念するとともに,在留している国の政治に介入せず,政治的中立を保持する義務があるから,外国人の政治活動の自由は憲法上まったく保障されていないとするのが判例である。

答えは(×)。

20. 憲法第3章に定める国民の権利および義務の各条項は,国民すべてに等しく平等に適用されるもので,成年のみを対象とした規定は存在しない。

答えは(×)。

21. 税理士会が政治献金を行うために会員から特別会費を徴収することは,結社の自由の範囲内の行為であり適法である。

答えは(×)。

22. 基本的人権は性質上自然人のみが享有することができ,法人は基本的人権を享有しないから,法人が政治献金を行うなどの政治的行為をなすことは認められない。

答えは(×)。

23. 女子の定年年齢を男子よりも低くした私企業の就業規則について,最高裁判所は,私企業には営業の自由が保障されており,どのような規則を定めるかは私的自治の原則の問題であるから,不合理な差別とはいえないとした。

答えは(×)。女子の定年年齢を男子より低く定めることは,もっぱら女子であることのみを理由として差別したものであり,不合理な差別にあたるとして,民法90条の規定により無効であるとしている(最判昭56.3.24 日産自動車女子定年制事件)

24. 憲法は貴族制度を否定しているわけではないので,貴族制度を復活させたとしても,なんらかの特典が伴わないかぎり憲法に違反するものではないとするのが通説である。

答えは(×)。参考書(長尾)36,37ページのNo.4選択肢3より出題。14条2項参照。

25. 憲法14条は法の下の平等を定めているが,合理的な区別は認められており,不合理な差別的取扱いだけが禁止される。

答えは()。教科書30ページの選択肢1より出題。形式的平等から生み出された不平等を是正するための合理的な区別は認められている。(最判昭60.3.27参照)

26. 尊属殺規定(刑法旧200条)は、尊属と卑属の関係において、差別的取扱いをしているので違憲である。

答えは(×)。理由付けが間違っている。参考書(長尾)33ページのNo.10参照。

27. 憲法19条は,思想・良心の自由を保障しているが,民主主義を否定する思想についてまでは,その保障は及ばない。

答えは(×)。教科書30ページの選択肢2より出題。平成19年東京消防庁。

28. 憲法21条の表現の自由は,基本的人権の中でも重要なものであるから,制限することは許されない。

答えは(×)。教科書30ページの選択肢4より出題。平成19年消防庁の問題から抜粋。

29. 民法上の諸原則について,遺言自由の原則により,遺言で遺産を自由に処分することができるが,一定の相続人の利益の保障のために,遺留分による制限を受ける。

答えは()。教科書66,67ページより出題。

問題 2(3点)

次の日本国憲法前文の空欄A〜Cに当てはまる語句の組み合わせとして正しいのはどれか。

われらは いづれの( A )も,自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて,( B )の法則は,普遍的なものであり,この法則に従ふことは,自国の( C )を維持し,他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

  1. 国家 国際社会 平和
  2. 国家 政治道徳 主権
  3. 国民 政治道徳 平和
  4. 国民 公正と正義 地位
  5. 人類 国際社会 平和

答えは 2

問題 3(3点)

次の人権保障に関する宣言や憲法などの説明として,妥当なものはどれか。

  1. バージニア権利章典 − 自然法に基づく天賦不可侵の権利を宣言した人権宣言の先駆である。
  2. ワイマール憲法 − 人権保障の国際的な標準を示し,人権の普及と拡大を促す。
  3. アメリカ独立宣言 − フランスの人権宣言をモデルとして,民主主義の基本原理をはじめて明確に規定した。
  4. マグナカルタ − 名誉革命を背景とした国王の恣意的課税の禁止,請願権,言論の自由などを規定している。
  5. 権利章典 − 人たるに値する生活のために,団結権を世界ではじめて規定した。次の記述のうち、正しいのはどれか。

正解者が1人しかいなかった問題。答えは 1。4の内容はイギリスの権利章典を示している。

問題 4(3点)

日本国憲法で規定されている基本的人権に関する記述として,妥当なのはどれか。

  1. 基本的人権は,最高法規である憲法が国民に与える権利であり,国家や憲法に先立って存在することはない。
  2. 基本的人権は,人間であれば当然に誰でも享有できる権利であり,人間の尊厳に由来する。
  3. 基本的人権は,侵すことのできない永久の権利とされ,いかなる場合にも公権力によって制限されることはない。
  4. 基本的人権は,自然権思想に基づく前国家的権利であるため,国籍に関らず,日本国内に住むすべての人に平等に保障される。
  5. 基本的人権は,現行憲法において保障されたものであるため,憲法改正によって基本的人権を否定することもできる。

答えは 2。4ではない。

  1. 誤り。
  2. 正しい。
  3. 誤り。
  4. 誤り。すべての人に必ずしも平等に保障されるわけではない。誰にでも保障されるが,例えば未成年者には選挙権が無いなど参政権や民法上の行為能力などで制約がある。また,天皇や皇族も参政権や婚姻の自由,言論の自由などが制限されている。外国人についても,参政権や社会権,入国の自由などで制約がある。
  5. 誤り。人類普遍の原理である基本的人権を否定するような改正は許されない。

問題 5(3点)

次のうち,現行憲法の「前文」に含まれているものはどれか。

  1. 日本国民は,正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し,国権の発動たる戦争と,武力による威嚇又は武力の講師は,国際紛争を解決する手段としては,永久にこれを放棄する。
  2. この憲法が日本国民に保障する基本的人権は,人類の多年にわたす自由獲得の成果であって,これらの権利は,過去幾多の試練に堪へ,現在及び将来の国民に対し,侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
  3. そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。
  4. この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
  5. 生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。次の記述のうち、正しいものはどれか。

答えは 3。教科書20ページよりそのまま出題。

  1. 9条1項の文言
  2. 憲法97条の文言
  3. 憲法前文1項の文言。したがって,これが答え。
  4. 憲法11条後段の文言
  5. 憲法13条後段の文言

問題 6(3点)

次のうち現行の憲法上可能なものはどれか。

  1. 参議院を廃止して国会を一院制にすること。
  2. 皇室の事件を専門とする特別の裁判所を設置すること。
  3. 会計検査院を廃止して内閣府に監査委員会を設置すること。
  4. 法務省に裁判官の懲戒処分を行う機関を設置すること。
  5. 一部の地方公務員について法律で規定し直接選挙により選出すること。

答えは 5

問題 7(3点)

憲法の改正手続きによる分類に関する記述として,正しいのは,次のうちどれか。

  1. 憲法の改正が通常の法律の改正と同じ手続きによるものが硬性憲法である。
  2. 憲法の改正が通常の法律よりも慎重で厳重な手続きによるものが軟性憲法である。
  3. 憲法の改正には議会の議決に加えて特別の国民投票を必要とするものが硬性憲法である。
  4. 憲法の改正が困難で,憲法の継続性が保障されるのが軟性憲法である。
  5. 憲法の改正が比較的頻繁で,憲法を事情の変化に適応させやすいものが軟性憲法である。

答えは 3

問題 8(3点)

日本国憲法の成立について正しいものを選べ。

  1. 日本国憲法は大日本帝国憲法を,その改正手続きにしたがって改正したものである。
  2. 日本国憲法は,政府の憲法問題調査委員会の案をそのまま採用したものである。
  3. 日本国憲法GHQの介入によらず制定された自主的な憲法である。
  4. 日本国憲法は大日本帝国憲法の廃止を帝国議会で決議し,新憲法として制定されたものである。
  5. 日本国憲法は1946年11月3日に施行された。

答えは 1

  1. 正しい。第90帝国議会にて行われた。
  2. 誤り。原案になったのはGHQ作成のいわゆるマッカーサー草案である。
  3. 誤り。上の選択肢で見たように,原案はGHQが作成したものである。
  4. 御名御璽の前に書いてある文に,「帝国憲法第73条による帝国議会の議決を経た帝国憲法の改正を裁可し」とある。
  5. 誤り。日本国憲法は1946年11月3日公布,1947年5月3日施行。

問題 9(3点)

日本国憲法上に規定する天皇に関する記述として,誤っているものはどれか。

  1. 皇位は世襲のものであって,国会の議決した皇室典範の定めるところにより,これを継承する。
  2. 天皇の国事に関するすべての行為には内閣の助言と承認を必要とし,内閣がその責任を負う。
  3. 天皇はこの憲法の定める国事行為のみを行い,国政に関する機能を有しない。
  4. 天皇は法律の定めるところにより,その国事に関する行為を委任することができる。
  5. 皇室に財産を譲り渡し,または皇室が財産を譲り受け,もしくは賜与することは,内閣の助言と承認に基づかなければならない。

答えは 5

問題 10(3点)

次のA〜Eのうち,日本国憲法に規定する天皇の国事行為に該当するものを選んだ組み合わせとして,妥当なのはどれか。

A 大赦および特赦を決定すること
B 国会議員の総選挙の施行を公示すること
C 憲法改正を発議すること
D 法律,政令および条約を公布すること
E 国務大臣を任命すること

  1. A, C
  2. A, D
  3. B, D
  4. B, E
  5. C, E

答えは 3

問題 11(3点)

明治憲法下の政治制度に関する記述として,妥当なのはどれか。

  1. 明治憲法下では,陸海軍を指揮命令する統帥権は天皇が有していたが,議会や内閣もそれに関与することができた。
  2. 明治憲法下では,帝国議会は衆議院と貴族院からなる二院制をとり,衆議院は民選であったが,貴族院は皇族,華族および勅任議員から構成された。
  3. 明治憲法下では,天皇は,行政組織や官吏制度について議会の承認なしに勅令でこれを定めることはできなかった。
  4. 明治憲法下では,司法裁判所の裁判は民事裁判と刑事裁判に限られ,行政裁判は別に設置された枢密院で行われた。
  5. 明治憲法下では,議会は天皇の立法権を輔弼する機関であり,各国務大臣は天皇に協賛して行政権を行使するものとされた。

答えは 2

  1. 不適。(統帥権の独立,11条)
  2. 答え。妥当な記述。
  3. 不適。明治憲法下では,天皇は統治権の総覧者であり,行政組織や官吏制度のみならず,執行命令はもちろん,緊急勅令や独立命令といった広範な命令制定権が認められていた(4条,8条,9条)。
  4. 不適。明治憲法下では,司法裁判所の裁判権は民事と刑事に限られ,行政裁判については,特別裁判所としての「行政裁判所」が担当し(60条,61条),いずれも天皇の名をもって行われた。
  5. 不適。帝国議会は天皇の立法権の協賛期間であり,内閣総理大臣をはじめとする国務大臣は天皇の行政権行使の輔弼機関であった(5条,55条1項)

問題 12(3点)

日本国憲法の平等権に関する記述として正しくないものはどれか。

  1. 華族その他の制度は認められない。
  2. 栄誉,勲章その他の栄典の授与によって特権が与えられる
  3. 婚姻は両性の合意にのみ基いて成立する
  4. 選挙権は一定の年齢以上の国民に平等に与えられる
  5. 尊属殺人の刑罰が,刑法では一般の殺人の刑罰より重いのは憲法14条に照らして違憲であると判決された

答えは 2

  1. 不適。妥当な記述。第90帝国議会にて行われた。
  2. 答え。いかなる特権も与えられない。憲法第14条3項参照。
  3. 不適。24条1項参照。
  4. 不適。15条3項参照。
  5. 不適。妥当な記述。最高裁判所は刑法200条の尊属殺重罰規定に違憲との判断を示している。1995年の刑法改正で,この規定は削除された。

問題 13(3点)

「平等」に関する法の規定について次の記述のうち,妥当なのはどれか。

  1. 尊属に対する殺人を一般の場合より極めて重く処罰する刑法の規定は,刑罰が重すぎる,あるいは刑が加重されること自体が平等の理念に反しているとして,刑法の当該規定から削除された。
  2. 父性を推定するために,女子のみに再婚禁止規定を設けることは,立法目的達成の手段として合理性に欠けるとして,民法の当該規定から削除された。
  3. 夫婦同氏の原則は,過去の家制度の名残であり,現代社会において合理的な意味をもたないとして民法から削除された。
  4. 非嫡出子が嫡出子の2分の1しか相続できないことについて,自らの意思・努力によっても解決不可能な事由による差別であるとして,民法の当該規定が削除された。

答えは 1

5. 立法手続きの保障は,法の支配の原理と直接結びつく 6. 違憲立法審査権は,法の支配の原理と直接結びつく 10. 国会における憲法改正案の審議において,衆議院先議の原則が定められている。 11. 憲法改正を審議するためには,総議員の2分の1以上の出席を必要とする 12. 日本国憲法の改正は,各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会がこれを発議する 13. 内閣は,各議員の総議員の3分の2以上の賛成を得た上で,憲法改正案を発議しなければならない

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