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国民主権

2015年1月14日

教科書34ページ。

国民主権

前文と第1条の規定参照。

第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって,この地位は,主権の存する日本国民の総意に基く。

要するに,

天皇の地位

国会の召集は天皇の国事行為であるが,召集の決定は内閣が行う。(平成22年警察官)

正しい(○)。国会の召集は天皇の国事行為である(第7条第1号)。しかし,国会(臨時会)の召集は内閣が決定する(第53条)。皇族についても相応の制約が必要とされている。

権利・能力などを人が生まれながらに身につけて持っていること。(「デジタル大辞泉」より)

日本国憲法における人権の享有主体は,第一義的には国民である。ただ,人権は「人間であるがゆえに当然に認められる権利」であることから,以下の場合に問題になる。

天皇(皇族),外国人,公務員,法人,在監者

初学者向けには,「憲法をわかりやすく 第2部 第5章 基本的人権の原理 四,人権の享有主体」が参考になる。

天皇(皇族)

天皇の人権享有については,大幅な制約がある(長尾, p15)。皇族も人権享有について大幅な制約を受ける(長尾, p15)

理解度チェック

次の文章の正誤を判断せよ。

天皇にも結婚の自由は保障されている。

誤り(×)。なお,後述の問題演習にも出題している。

天皇の人権享有には大幅な制約があるが,皇族については一般国民と同等の人権享有が保障されるべきである。

誤り(×)。皇族についても相応の制約が必要とされている。

天皇も日本国民としての人権が保障され、ただ職務の特殊性および皇位の世襲制から必要最小限の特別扱いが認められるにすぎないから、選挙権・被選挙権などの参政権を認めることも許される。

誤り(×)

天皇は基本的人権の享有主体たる「国民」には含まれないが,皇族は基本的人権の享有主体たる「国民」に含まれ,天皇との距離に応じた特別な取扱いが認められるとすることに争いはない。(地方上級)

誤り(×)。天皇および皇族の人権享有主体性については,学説上,定説はない。

天皇や皇族も,権利の性質に抵触しない限りにおいて,人権享有主体とみなされる。

正しい(○)。天皇や皇族の人権享有主体は認められる。ただし,選挙権・被選挙権,公務就任権,国籍離脱の自由,移住の自由,職業選択の自由など,権利の性質上制限がある。

外国人

学説・判例は次の点で一致している。

  1. 外国人にも人権保障は及びうる
  2. ただし,日本国民と同様ではない
  3. ある権利が外国人に及びうるか否かを判断する基準は,個々の権利の性格である

理解度チェック

次の文章の正誤を判断せよ。

外国人に国政選挙権を与えることは憲法上禁止されているが,憲法改正にともなう国民投票に参加する権利を与えることは禁止されていない。

誤り(×)。前半は正しいが,後半は誤り。学説はほぼ一致して不可としている。

憲法上,外国人に対して,労働基本権は必ず与えなければならないが,勤労権は与えなくてもよい。

正しい(◯)。勤労権とは働く権利のこと。日本国憲法第27条参照。

外国人は,憲法上,政治活動をいっさい禁止されている。

誤り(×)。全面的に否認されているわけではない。マクリーン事件参照。

国政選挙の選挙権・被選挙権は、国民主権原理から日本国民のみに認められた権利であって外国人には補償は及ばないが、いわゆる定住外国人に法律で地方公共団体の選挙権を付与することは憲法上禁止されていない。

誤り(×)

基本的人権は,人種・性・身分などの区別に関係なく,人間であるというただそれだけで当然に享受できる権利であり,在留外国人も社会保障を受ける権利を有するから,社会保障給付について,在留外国人は日本人と同等に扱わなければならない。(国家II種,平成15年度)

誤り(×)。憲法上の基本的人権の保障は,基本的人権が「人間であるがゆえに当然に認められる権利である」ことから,権利の性質上日本国民のみを対象としていると解されるものを除き,在留外国人に対しても等しく及ぶ(最判昭53.10.4・マクリーン事件)。しかし,社会保障上の施策における在留外国人の処遇については,国の政治的判断にゆだねられており,自国民を在留外国人より優先的に扱うことも許される,と解している(最判平元.3.2・塩見事件)

憲法上の基本的人権の保障は,権利の性質上,日本国民を対象としていると解されているものを除き,わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶべきと解すべきであることから,外国人には,在留の許否に関する国の裁量を拘束するまでの保障が与えられている。(国家I種,平成15年度)

誤り(×)。外国人に対する憲法の基本的人権の保障は,外国人在留制度の枠内で与えられているにすぎないものであって,在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障が与えられているものではない(最判昭52.10.4)

公務員

政治的行為を制限し,労働基本権を制限している(長尾『20日で学ぶ』p.15)。

公務員の人権制限ならびに,重要な判例である,全逓東京中郵事件,全農林警職法事件の簡単な概要については次のページ参照。

理解度チェック

次の文章の正誤を判断せよ。

公務員は,労働基本権については厳しい制約の下におかれているが,表現活動については特段の規制があるわけではない。

誤り(×)。政治活動について,きわめて厳しい規制がある。

公務員の職務上の義務として,職務上知り得た秘密を漏らすことを禁ずるだけではなく,公務員を退職した後も,公務員当時に知り得た秘密を漏らすことを禁じ,これに違反した場合には刑事罰を科すような制度は,表現の自由を著しく制約するものとして許されない。

誤り(×)。国家公務員法100条,地方公務員法34条参照。

基本的人権には政治活動の自由が含まれ,一国民である国家公務員も政治活動の自由を有するから,勤務時間外の国家公務員の政治活動を制限することは,憲法上許されない。(国家II種,平成15年度)

誤り(×)。公務員の持つ政治的中立性に鑑み,最高裁はその性質を損なうおそれのある公務員の政治活動を禁止することは,それが合理的で必要やむを得ない限度にとどまるものである限り,憲法の許容するところであるとし,勤務時間外の国家公務員の政治活動に罰金刑を課した(最判昭49.11.6・猿払事件

法人

理解度チェック

次の文章の正誤を判断せよ。

法人は人間(自然人)ではないから、権利能力を持たない。

誤り(×)。後の問題演習でも出題。

法人に懲役刑を科すことはできないが,罰金刑を科すことは可能である。

正しい(◯)。後の問題演習でも出題。

基本的人権は性質上自然人のみが享有することができ,法人は基本的人権を享有しないから,法人が政治献金を行うなど政治的行為をなすことは認められない。(国家II種,平成15年度)

誤り(×)。最高裁は,憲法が定める基本的人権に関する各条項は,性質上可能な限り,内国の法人にも適用されると解すべきであるとし,法人である会社は,政治的行為をなす自由を有し,政治献金もその自由の一環であると判示した(最判昭45.6.24・八幡製鉄事件)。

在監者

理解度チェック

次の文章の正誤を判断せよ。

在監者は一般国民とは異なった人権制限に服することとされ、新聞閲読の自由や信書の発受を行う自由は認められない。

誤り(×)。

実践問題

次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. (国政・地方含めて)選挙権は国民固有の権利であるから、外国人にこれを保障することは憲法上禁止されている。
  2. 法人に懲役刑を科すことはできないが、罰金刑を科すことは可能である。
  3. 天皇にも結婚の自由は保障されている。
  4. 法人は人間(自然人)ではないから、権利能力を持たない。
  5. 外国人は、社会保障について、日本国民と同様の権利を享受しうる。

長尾一紘『はじめて学ぶやさしい憲法』72ページより出題。

  1. 誤り。国政選挙についてはその通りだが、地方選挙権については法律次第で選挙参加も許されうる。
  2. 正しい。
  3. 誤り。保障されていない。
  4. 誤り。権利能力を持つ。
  5. 誤り。同様の権利までは保障されていない。

したがって、答えは 2

以下の人権のうち、通説・判例において、外国人に憲法上の権利として保障されないものを1つ選べ。

  1. 新聞社を設立すること
  2. 衆議院議員選挙で投票すること
  3. 労働組合に加入すること
  4. 日本から海外に出国すること

答えは 2。外国人に国政選挙権を与えることは禁止されています。保証もへったくれもありません。

未決勾留中の被疑者が,拘置所内で新聞を継続購読していたところ,拘置所長が拘置所内の秩序維持のために,新聞記事の一部を抹消した。この事例に関するつぎの記述のうち,妥当なものはどれか。(市役所)

  1. 在監関係は特別権力関係の典型的なケースであり,その場合,拘置所長の措置を争って出訴することはできないとするのが判例である。
  2. 在監者についても精神的自由は保障され,したがって,集会・結社の自由や知る権利について拘置所内の秩序維持を理由に規制することは違憲であるとするのが判例である。

(解答)3

人権の享有主体に関する次の記述のうち,妥当なものはどれか。(地方上級,平成16年度)

  1. 天皇も日本国民としての人権が保障され,ただ職務の特殊性および皇位の世襲制から必要最低限の特別扱いが認められるにすぎないから,選挙権・被選挙権などの参政権を認めることも許される。
  2. 未成年は成熟した判断能力を持たないため,本人保護の必要から権利の一部を制限することも許されるから,学校が校則により児童・生徒の思想を制限することも認められる。
  3. 痴呆や知的障害のために判断能力の十分でないと考えられる者に対して,その財産の自由な処分を制限する法律を制定することは違憲である。
  4. 在監者は一般国民とは異なった人権制限に服することとされ,新聞閲覧の自由や信書の発受(はつじゅ)を行う自由は認められない。
  5. 国政選挙の選挙権・被選挙権は,国民主権原理から日本国民のみに認められた権利であって外国人には保障は及ばないが,いわゆる定住外国人に法律で地方公共団体の選挙権を付与することは憲法上禁止されていない。

(答え)5

憲法の保障する基本的人権の享有主体に関する次の記述のうち,妥当なものはどれか。(地方上級)

  1. 憲法第3章に定める国民の権利および義務の各条項は,国民すべてに等しく平等に適用されるもので,未成年者のみを対象とした規定は存在しない。
  2. 憲法第3章に定める国民の権利および義務の各条項は,自然人のみに適用されるもので,内国の法人には適用されないとするのが判例である。

(答え)3


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