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四日市大学非常勤講師 石田 修二
このページは,2014年10月25日(土)に日本都市学会第61回全国大会で行った研究発表のサポートページです。
一部,お見せできないスライドは外しています。ですが,本筋には影響ありません。
2013年9月1日に事務局に提出したものです。
商店街の衰退が言われて久しい中,現在,多くの商店街組合が活性化に向けて悪戦苦闘している。
筆者は,三重県四日市市の四日市一番街商店街振興組合(以下,「四日市一番街組合」)という商店街組合に役員として参加している。四日市一番街組合も他の地方都市商店街同様,商店街の活性化対応に取り組んでいる。しかし,一方で役員の高齢化等,商店街活動への参加率といった組織内部の問題にも対応せざるをえない状況になっていく,万全の組織体制で活性化に取り組むことが難しくなっている。内部から見ていると,現状のままでは,活性化対応はもちろん組合活動を維持していくことは極めて困難と言わざるをえない。
従来,商店街活性化の多くのテキストでは,個々の店,商店主に向けたものが多く,組合の問題点に視点をおきつつ活性化を考察したものは多いと言えない。
以上の問題意識を踏まえ,当発表では,四日市一番街組合の活動を紹介しつつ,商店街の維持,再生に向けて,商店街組合はどうあるべきか,根本的には組合は果たして必要なのかを踏まえて考察したい。
四日市一番街組合は,近鉄四日市駅東側をカバーエリアとしている組合である。近鉄四日市駅前には多くの物販,飲食店が存在しており,その互助組織として複数の商店街組合が存在している。このうちの1つである。他の組合と異なり,加盟店には個店のみならず,百貨店をスーパーマーケットが含まれている。エリア全体がアーケード街となっており,また歩行者用道路はカラー舗装されている。加盟店の規模もさることながら,総資産は3億円と財務面から見ても地方都市の商店街組合の規模からは大型の部類に入る。
しかし,組合を取り組む環境は,決して安泰なものではない。まず,一番大きな問題として他の地方都市の商店街と同じく活性化,再生問題への対応に迫られている。組合のカバーエリアは,一時期の最悪期は脱したとはいえ,依然として大きな空き店舗面積を抱えている。通りの多くは依然として,通行量が少なく,賑わいが復活したとは言い難い。そして,加盟店の多くは厳しい業績が続いている。かつて多くの存在した物販店は売上減ならびに後継者問題から多くが撤退し,今は飲食店街に様変わりしつつある。
商店街の再生,活性化といった問題には対応していくのが,商店街組合であるが,現状では経営資源の制約から問題に力強く対応していくことが難しくなっている。経営学の教科書にはヒト・モノ・カネという3つの経営資源が紹介されている。これに則して述べれば,カネについては,かつての好景気時代に行った巨額の投資の返済が重くのしかかり,自由に使える資金は多くない。駐車場収入や会費収入についても,大幅な収入増が見込めない状況が続いている。
モノについては,ソフト面でイベント,ハード面で駐車場やアーケードといったインフラを所有するものの,上述のように自由に使える資金に制約があるため,資金を投入して新たなことを行っていくのは難しい。現状維持を財務の方針にせざるを得ない状況である。
ヒトの力も厳しい。まず,役員のなり手がいない。いわゆる後継者不足である。現在,当組合では19名の役員を擁しているが,私も含め,同じ顔ぶれによる再任が続いている。このような状況になる要因として,組合活動に対して,消極的な組合員も多く存在することが挙げられる。組合活動は,自分の店の儲けに結びつかない。組合活動に力を入れるよりは,自分の商売に精を出した方がよい,という理屈である。事実,協力をお願いしているイベントですら,協力してくれる組合員は役員を除けば少ない。
商店街の活性化には個々の店舗が頑張ることも重要である。しかし,街としての活性化にバラバラで取り組むには限界がある。また,アーケードやカラー舗装の維持管理といったインフラ整備には組織的な取り組まざるをえない。したがって,筆者としては,商店街の発展のためには商店街組合は今後も必要であると考えている。しかし,その認識がどこまで組合員,非組合員を含めてどこまで認識されているかは疑問である。
多くの文献において,商店街組合の改革として,役員のリーダーシップ,コンセプトの明確化,ディベロッパー機能の強化,事務局の充実強化といった提案がされている。方向性としては正しいと思う。しかし,上述のような問題を抱える組織の枠組みで,これらに取り組むのは極めて困難である。仮に今取り組んだとしても,例えば後に続く役員がいない,資金力が厳しいという状況では,長期間続けていくことは難しいだろう。したがって現状では,隣接する組合との連携を強化して,共同で取り組んでいくことがもっとも現実的である。まずはマンパワー不足を解消には役立つ。
遅ればせながら,当地でもようやくそうした取り組みが本格化してきた。一昨年は商工会議所がメインとなって,中心市街地の活性化についてワークショップが行われたが,この時は商店街組合という枠組みではないものの,多くの当該地域の多くの商店主が参加した。また,今年もこの秋から約半年間,当組合ならびに隣接する組合とともに,活性化のためのワークショップを行うことになっている。ただし,これまでのように活性化プランを作って終わり,というのではなく,プラン作成を通じて連携ならびに組織作りを図ることにウエイトが置かれている。筆者も,この会合に一参加者として参加することになっている。
もっとも,広範囲の連携という意見もあるが,参加人数が拡大し過ぎると,意見の集約に手間取るので,まずは近隣の商店街組合の連携が望ましい。運営のノウハウや成功を積み重ねた上で,多様な組織との連携を深めていくのがいい。
以上のように一番街商店街の紹介をしつつ,今後の課題について,筆者の考え方を述べた。活性化の模範として紹介されている地域と比較して,取り組みが遅れているとの批判も承知している。
また,これまでの説明の多くは,現段階においては仮説,試論に過ぎない。今後,商店街組合ならびに役員の協力を得て,加盟店へのアンケートを実施するなどして,計量化していく必要があると考えている。
こうした取り組みを積極的に公開し,商店街活性化において商店街組合が必要不可欠な存在であることを明らかにしていくことも予定している。
そうすることで,多くの人の参加を促し,ひいては商店街組合の経営資源のヒト・モノ・カネの制約を解消にもつながると考えている。
リンクはご自由にどうぞ。
Last modified: 2014-10-26 23:15:14